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2026.07.08

2026年版 ヤマトシロアリのハネアリ群飛レポート

弊社は毎年ヤマトシロアリのハネアリが群飛する4月〜5月にかけて「ハネアリ群飛調査」と称して、群飛のタイミングや量、また該当建物の構造や被害状況などを調査しています。今回は、その2026年の最新情報をお届けします。

1.群飛(ぐんぴ)とは

 シロアリは、女王や王を中心に職蟻や兵蟻などの役割をもった多数の個体で集団(コロニー)を形成する社会性昆虫です。コロニーの中には、新たな女王や王となる個体が存在し、これを「有翅虫(ゆうしちゅう)」と呼びます。一般には「ハネアリ」として知られています。

 この有翅虫(=ハネアリ)は、あるす特定の時期や時間帯に巣から一斉に飛び立ち、雌雄のペアとなって新たなコロニーを形成していきます。このように、多数のハネアリが一斉に飛び立つ現象を「群飛(ぐんぴ)」と呼びます。

群飛の様子はこちらの動画をご覧ください。(※閲覧注意)


2.ヤマトシロアリの群飛

 群飛の時期や時間帯はシロアリの種類によって異なります。たとえば、ヤマトシロアリの場合、沖縄では2月中旬頃から群飛が始まり、桜の開花のように季節の移ろいとともに徐々に北上していきます。本州では、4月から5月の大型連休の時期にピークを迎え、主に昼間に飛び立つのが特徴です。

 一方、イエシロアリは、沖縄では4月下旬、本州では6月頃に群飛が見られ、主に夜間に飛び立ちます。
 弊社では、ヤマトシロアリの群飛が活発になる毎年4~5月にかけて、「ハネアリ群飛調査」を実施しています。

ハネアリ

 

3.ハネアリ群飛調査の目的

 私たちは、120年以上にわたり、個人の住宅から木造の社会インフラ、さらには文化財に至るまで、シロアリの防除・管理に取り組んできた企業です。シロアリは目に見えにくい形で社会に大きな被害をもたらしているにもかかわらず、その研究はいまだに未解明な点が多く残されています。

 私たちは防除の最前線で得られた現場の調査データを蓄積・検証し、それらをもとにシロアリの生態解明や新たな防除技術の開発を目指しています。


4.2026年のハネアリ群飛調査

4-1.ハネアリ群飛調査 調査条件

  • 期間:2026年4月1日~5月31日にかけて
  • 地域:千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、岐阜県
  • 対象:ヤマトシロアリの群飛
  • 方法:点検時の弊社社員によるお住まいの方へのヒアリングと現地調査
  • 気象:愛知県名古屋市を参照

 

4-2.2026年のハネアリ群飛傾向

以下が2026年群飛傾向をまとめたものです。

 2026年は、3月30日に初めてハネアリの群飛が確認されました。平年は4月13~14日の発生でしたので、今年は異例の早さであったと言えます。そして4月9日あたりからじわじわ群飛が確認されはじめ、4月24日にはじめのピークが発生しました。そののちの4月28日に今季最大の群飛ピークとなりました。3月30日の早期発生を除けば、他は今年も例年同様の発生タイミングでした。

 

◎桜の開花との美しい相関

 私たちはこれまで、桜の開花日とヤマトシロアリの初期群飛日との間に、強い正の相関関係があることを提唱してきました。直近数年間のデータでは、桜の開花からおよそ20日前後に初期群飛が確認されており、桜とシロアリが感じ取る季節の変化には同質性があるという仮説は、着実に実証されつつありました。しかし、2026年シーズンは、これまでの「およそ20日」という常識を大きく覆す、極めて異例かつ興味深いデータが得られました。(図表参照)

 今年の桜の開花(名古屋)は、平年(3月24日)よりも1週間ほど早い「3月17日」でした。過去9年の記録を振り返っても、平年より遅かったのはわずか2度しかなく、他は平年より早い開花となっています。地球温暖化をはじめとする気候変動の影響なのか、確実に開花は前倒し傾向にあると言えます。

 それと連動するかのように、今シーズンの群飛初観測日は「3月30日」という、これまでにない異例の早さとなりました。平年の初観測日(4月13〜14日頃)と比べると、2週間も早い2つの意味での“フライング(先走り・飛翔)”です。

 近年の記録では、綺麗に「約20日」をキープしていた桜の開花と群飛初観測までのタイムラグが、今年はわずか「13日」へと大幅に短縮されました。平年以上の暖かな春となったことで積算気温が早期に蓄積し、私たちの予測を超えてシロアリの羽化への発育スピードを高めたと考えられます。

 しかし、タイムラグの異例の短縮とは言え、グラフからは桜の開花との連動性は感じ取れるため、桜の開花と群飛との間の相関関係は、今年も裏付けられる結果であったと考えます。

 気になるのは、開花から群飛までのタイムラグが、近年短縮傾向にあることです。もしかすると、積算気温の蓄積は、シロアリの羽化に対して桜の開花以上に強く影響を与えるのかもしれません。このように新たな興味深い仮説が見えてきました。こちらについては、来年以降も傾向を注目して観察してまいります。

◎『530℃・780℃の法則(初期群飛) 』『650℃・950℃の法則(群飛ピーク)』のズレ

 このような桜の開花との並行した群飛の前倒し傾向から、当初は「今シーズンは群飛のピークもさぞや早まることだろう」と予測していました。しかし、実際は、4月中旬にあった、前日に雨が降り最高気温25℃ほどとなるヤマトシロアリの群飛の引き金となる絶好の気候条件が揃った日(4月11日・16日など)でも、ピークと言えるだけの『大量発生』は起きませんでした。結局、今年最初の群飛ピークを迎えたのは、例年とさほど変わらない「4月24日」でした。しかし、この時の積算気温は「平均累計739.5℃・最高累計1040.2℃」であり、『650℃・950℃の法則(群飛ピーク)』から大きく外れる結果でした。

 

 「初発は異例の早さだったのにピークは例年通り(最高の条件の日もあったのにも関わらず)」

 

 ――この一見すると矛盾するような不可解な現象は、一体何を意味しているのか。この謎を、私たちがこれまでの調査で導き出した積算気温による『530℃・780℃の法則(初期群飛) 』や『650℃・950℃の法則(群飛ピーク)』、そして生物学論文の知見などを照らし合わせて、解き明かしてまいりたいと思います。

 

①「異様な前倒し」はイレギュラーか?

 例年、ヤマトシロアリの初期群飛が始まる目安となる3月1日からの積算気温は『平均気温530℃・最高気温780℃』ですが、今年3月30日の初観測時点での積算気温は『平均気温323.7℃・最高気温502.5℃』で、これまでの法則からは大幅に下回る数値でした。

 ここで、この3月30日の初発生を「何らかの外的要因による特異なイレギュラー(例外値)」として一旦除外して考えてみます。すると、次にハネアリが観測されたのは4月9日で、そこまでの積算気温は『472.9℃・698℃』となります。これでもまだ例年の基準値よりはやや低いものの、当然に3月30日の数値に比べれば『530℃・780℃の法則』の射程圏内に収まってはきます。

 では、この「積算気温が全く足りていなかったはずの3月30日」に、なぜハネアリが発生したのか。ここに、近年の高精度なシロアリ研究の論文が示す「生物学的引き金」が関係している可能性に突き当たります。

 

②外的ストレスによる「緊急脱出」

 ヤマトシロアリなどのミゾガシラシロアリ科では、女王や王(主生殖虫)が消滅すると、生き残った職蟻たちがわずか数日から数週間で、生殖虫へと変態を始めることが実証されています。また、海外のヤマトシロアリと同種のシロアリによる研究でも、閉鎖空間に孤立した職蟻集団ほど、生存をかけて生殖虫への分化が高頻度で確認されるというデータが報告されています。
Development of Experimentally Orphaned Termite Worker Colonies of Two Reticulitermes Species  (Isoptera:Rhinotermitidae) より)

 これらを現場の視点に置き換えると、ひとつの仮説が成り立ちます。この3月30日にハネアリが発生した現場は、昨年駆除工事をおこなった建物でした。その建物に一部残された未施工箇所から発生したものでした。そのわずかな未施工箇所で“孤児化”したシロアリが、他の箇所へ移ることもできず、過度な「過密・隔離ストレス」がかかったことで、生き残りをかけて生殖中へと分化して、新天地を目指して飛び立ったのではないかというストーリーが浮かび上がります。すなわち、3月30日の異例の早期発生は、春の温暖化という自然環境の影響だけでなく、「シロアリ駆除工事」による外因が引き起こした可能性があります。

 駆除工事によって女王から隔離されて行き場をなくしたシロアリたちに「抑制フェロモン」が遮断され、「危機のスイッチ」が入り、さらに狭い場所に押し込められる「過密ストレス」を同時に受けた結果、防衛本能として自然界の積算温度のルールを無視し、「全滅する前に早期にここから緊急脱出しなければならない」というリミッター解除で飛び出した個体だったのではないか、という考察です。

 3月30日の大幅なデータのズレは、シロアリの必死のサバイバルの現れだったのかもしれません。

③ピークを例年通りに収束させた「日長」の影響

 一方で、そのような一部“フライング”がありながらも、なぜ群飛の全体的なピークは4月12日などの好条件をスルーして、4月24日という例年並みに落ち着いたのでしょうか。

 ここでヒントになるのが、岡山大学などの研究チームが発表した、昆虫の季節適応に関する論文です 。

 こちらは、コオロギの幼虫発育制御メカニズムに関する研究結果であり、シロアリに直接転用できる訳ではありませんが、一つの可能性として考察に活用させていただきます。

 この研究では、昆虫の発育において「温度」は成長速度を決定し 、「日長(昼の長さ)」が脱皮回数と個体の大きさを決定していることが、初めて分子レベルで明らかになりました 。

 この知見をヤマトシロアリの群飛ピークの謎に当てはめると、春先の異常高温によってシロアリ各個体の成長速度は早まっていたと思われますが、ハネアリとして飛び立てる状態まで体の形成が整うには、一定の脱皮回数が必要です。そこが「日長」の影響を受けるとするならば、いくら気温が高くなったとしても、どうしても縮められない物理的な「天体のカレンダー」による制限を受けていることになります。そう考えれば、積算気温によるデータだけでは説明がつかなかった「例年並み」となった群飛ピークの謎について説明がつきます。

 「気温」と「日長」の2つの要件があることは、春先にたまたま暑くなったような“偽りの初夏”の罠に騙されて、飛び立ったは良いがその後気温が低下して全滅するのを防ぐために、「日長」というもう一つのセーフティネットが組み込まれているという説を考えることができます。だからこそ、今シーズンの群飛ピークは、すべての条件(積算気温・日長・前日降雨・当日気温)が揃い切った4月24日に、発生したのだと考えられます。

 シロアリたちは一時の気候変動にだまされることのないように、積算気温による「アクセル」を踏み込みつつも、日長という「ブレーキ」も設けて命を繋いでいるのだとしたら、非常に賢く逞しく生きていると感じます。さすがは、恐竜よりもはるか昔の3億年ほど前からこの地球で生き残ってきただけのことはあります。

 

――今回得られた不可解なデータは、彼らの持つ巧みな生存戦略の凄みを教えてくれたように思います。

やはり降雨とハネアリの発生は密接な関係

 ヤマトシロアリのハネアリは、『雨上がりの気温が高い日に発生する』と言われており、これまでの調査でも同様の傾向が毎年確認されています。今年もその法則を裏付けるデータが得られました。

 最初の発生が確認された3月30日をはじめ、ピークを迎えた4月24日や4月27日などは、いずれも前日に降雨が記録されています。ただ興味深いことに、それ以降は降雨の有無にかかわらず、また夏日のような暖かい日でなくとも、5月中旬頃までは連日のように群飛が確認されました。

 『雨上がりで気温が高まる日中』という定説は初発やピークの条件としては正しいと言えますが、シーズンが本格化してからは、必ずしも降雨や気温に左右されずに発生が続く性質があるようです。

 ハネアリが発生した建物種別を見ると、戸建て住宅が全体の約75%と圧倒的多数を占めています。しかし、店舗やオフィス、集合住宅、公共施設など、それ以外のあらゆる用途の建物からもハネアリの発生が確認されています。
建物構造においても、80%以上という大多数が木造ですが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物でもハネアリは確認されています。シロアリが建物構造や用途を選んで被害をもたらしているわけではないことが、これらのデータからも明らかです。

 日本の戸建て住宅における非木造の割合は10%未満と言われています。それに対して、今回の調査で鉄骨造・鉄筋コンクリート造からの発生が合計で18%以上を占めています。これは、確率論で言えば「むしろ木造よりも発生率が高い」とさえ言えます。

 また、日本の建物全体のうち、戸建て以外の建物(集合住宅・店舗・公共施設など)が占める割合はおよそ25%とされていますが、今回の調査でも戸建て以外の建物からの発生がおよそ25%ありました。このことからも、シロアリ被害が建物種別に依存しないことが伺えます。

 こうした背景には、非木造建築におけるシロアリ対策への危機意識の低さが影響していると考えられます。「非木造だから大丈夫」とシロアリ防除を実施していない建物が多く、その結果として、これらの建物での発生率が相対的に高くなっているのではないかと示唆されます。

 

『保証中』の物件は守れているか?

 ハネアリが発生した物件のシロアリ防除の保証状況を調べたところ、85%以上が「保証なし」という結果でした。また、「保証なし」の物件では82%に実際の「被害あり」が確認され、シロアリ防除がいかに建物を守るうえで有効であるかが浮き彫りとなりました。

 一方で、シロアリ防除をして「保証中」であっても完璧ではなく、14%ほどでハネアリの発生が確認されています。ただし、これには庭や駐車場、玄関先やバルコニーなどでの発見が含まれており、そのうち実際の被害まで至っていたのは19%ほどに留まっています。およそ81%は「喰害なし」と、保証なしの物件とは真逆の結果となっています。

 なお、当社の防除工事の保証期間中防護率は99.9%以上の高さを誇ります。「完璧」がない世界だからこそ、より確かな技術の防除を選ぶことが重要です。シロアリの侵入リスクを大幅に低減するためには、高い技術力に裏打ちされた防除工事が極めて有効であることに変わりはありません。大切な住まいを守るためにも、防除薬剤の効果が持続し、かつ保証が付帯している状態を維持することが重要だと言えるでしょう。


5.まとめ

2026年のヤマトシロアリ群飛調査は、3月30日の過去最速の初観測から始まり、私たちの蓄積してきた「530℃・780℃の法則」や「桜の開花との20日相関」の数値を大きく揺るがす、極めて異例のシーズンとなりました。しかし、この一見不可解なデータのズレを紐解くことで、むしろシロアリの驚くべき生態の全貌と、私たちが取るべき防除対策のあり方が浮き彫りになりました。

 

3月30日の異例のフライング発生しても、全体的な群飛のピークが例年通りの時期に収束したのは、「日長」に制御された「セーフティネット」が機能したためと考えられる。

シロアリ被害は建物種別・構造を問わない

被害発生はシロアリ防除(保証)の有無が分ける。

 自然界は気候変動によって刻一刻と変化し、シロアリたちもまた、積算気温というアクセルと日長というブレーキを巧みに使い分けながら、3億年前から変わらぬ逞しさで生き抜いています。生物に「絶対」がない以上、私たちが大切な資産を守るためにできる最も確実な手段は、99.9%以上の高い防除率を誇る確かな技術で、常に「薬剤の効果と保証が維持された状態」をキープし続けることにほかなりません。

 私たちは今後も、この変わりゆく気候とシロアリの生態変化を多角的に注視し、より精度の高い情報と確かな安心をお届けできるよう、地道な調査と観測を続けてまいります。

 

 


過去の群飛レポートはこちら▼

 ※2025年版

 ※2024年版

 ※2023年版

 ※2022年版

 2021年版

 ※2016年~2020年までの5年分のデータから読み取れること