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2022.03.29

2021年 ヤマトシロアリのハネアリ群飛レポート

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弊社は毎年ヤマトシロアリがのハネアリが群飛する4~5月にかけて「ハネアリ群飛調査」と称して、群飛のタイミングや量、また被害建物の構造や築年数などを調査しています。今回はその一部をご紹介します。

 

1.群飛(ぐんぴ)とは

 シロアリは女王や王を中心とし、職蟻や兵蟻など役割分担をもった多くの個体で集団(コロニー)をつくる社会性昆虫です。そのコロニーの中で新たな女王や王となっていくものを有翅虫(ゆうしちゅう)と言い、これを一般的には”ハネアリ”と呼んでいます。

 この有翅虫(=ハネアリ)が、ある時期ある時間帯に巣から一斉に飛び立ち、雌雄対となって新たなコロニーを形成していきます。この多くのハネアリが一斉に飛び立つことを群飛,またはスウォームと言います。

 

 

2.ヤマトシロアリの群飛

ハネアリ

その群飛する時期や時間帯はシロアリの種類によって異なります。ヤマトシロアリの場合、沖縄では2月中旬頃から始まり、桜の開花のように季節の移ろいとともに徐々に北上していきます。本州では4月から5月のちょうどゴールデンウィークあたりの時期にピークとなり、その時間帯は昼間に飛び立つことが多いです。ちなみに、イエシロアリの場合は、沖縄では4月後半に、本州では6月頃の夜に群飛します。

弊社では、ヤマトシロアリが群飛する毎年4~5月にかけて「ハネアリ群飛調査」を実施しています。

 

3.2021年のハネアリ群飛調査

3-1.ハネアリ群飛調査 調査条件

  • 期間:2021年4月1日~5月31日
  • 地域:千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、岐阜県
  • 対象:ヤマトシロアリの群飛
  • 方法:点検時の弊社社員によるお住まいの方へのヒアリングと現地調査
  • 気象:名古屋市を参照

 

3-2.ハネアリ群飛調査 群飛発生状況

今回は昨年2021年に実施したハネアリ群飛調査で得られたデータからの分析結果をお伝えします。

 

2021年ハネアリ群飛傾向グラフ

まずはこちらの群飛の発生状況についてです。
まず、前日の4月29日に降雨があり翌日気温が上昇した4月30日に群飛のピークを迎えています。同様に、5月6日も同様な傾向を示しており、一般的に言われているヤマトシロアリの群飛条件である「雨上がり後の気温が上昇した日中」ということに合致します。4月17日にも多くの降雨が確認されましたが、この時には翌日の4月18日はそれほど気温が上がらず群飛は限定的であった事がわかります。
しかしながら、降雨後の気温上昇時に集中することは間違いないと言えますが、この期間ほぼ毎日のように群飛が確認されていることから、必ずしもそれが絶対条件ではないとも言えます。
これらのことから、ヤマトシロアリの群飛は降雨後の気温上昇時に集中するが、4月下旬から5月上旬にかけてはその条件であろうとなかろうとほぼ毎日発生していると言え、この時期の警戒は怠らないほうが良いと言えるでしょう。

 

3-3.ハネアリ群飛調査 群飛発生建物情報

群飛が発生した建物構造、築年数について見ていきます。

被害建物

 

群飛が確認された建物構造は、その70%を木造住宅が占めていました。改めて木造住宅にとってシロアリは要注意な存在であるということがわかります。しかし、鉄骨造やRC(鉄筋コンクリート)造の非木造の建物からも群飛は発生しており、鉄骨造だから,鉄筋コンクリート造だからシロアリ被害には遭わない、とは言えないということがわかります。つまり、どのような建物構造であっても、シロアリ被害は発生すると言えます。

 

築年数別

次に被害があった建物の築年数について見ていきます。
まず、最も割り合いが多かったのは築21年~30年の建物でした。更には築40年までを含めると全体の半数近くを占め、築後20年を超えた建物からの群飛が多いという事がわかります。これは、新築時のシロアリ防除効果は通常は5年,長くても10年です。その効果がなくなり放置してしまったことで、その間にシロアリ被害が発生してしまったものと考えられます。群飛は一定程度コロニーが大きくならないと起きないため、被害発生から最初の群飛までにはヤマトシロアリの場合で3~4年ほどかかると言われています。このことから、築20年経過したあたりで群飛が発生した建物には、築15年前後くらいの時期から被害は発生していたものと推測できます。
また、築20年以下の建物であっても13%に被害が確認されており、中には竣工後5年未満での群飛発生事例もありました。これは基礎パッキン工法やホウ酸処理など、新築時にシロアリ防除専用薬剤による処理が実施されていない建物があることも一因としてあると思われます。
少なくとも、新しい建物であればシロアリ被害は発生しないということではなく、築年数に寄らず被害に遭うことはあるため、シロアリ被害と建物の築年数に関係はないと言えます。

 

4.まとめ

今回は2021年春に実施したヤマトシロアリのハネアリ群飛調査についてお伝えしました。
今回のデータから読み取れることまとめると、

・4月下旬~5月上旬の雨上がりの気温の高い日はヤマトシロアリのハネアリがまとまって発生するが、その期間であればその条件でなくともほぼ毎日群飛は発生している
・木造はもちろんのこと、非木造の建物であってもシロアリ被害のリスクがある
・築年数には関係なくシロアリ被害に遭う恐れがある

ハネアリが発生した建物にお住まいの方からは「まさか自分の家がシロアリ被害にあうとは・・・」と落胆される声を多く耳にしてきました。また、中には大量のハネアリが発生しその気持ちの悪さにショックを受けて寝込んでしまわれた方もおりました。
前述した通り、ハネアリの発生までには数年かかります。その数年の間も静かに被害は進行していきます。お住まいの方にヒアリングしていると、「実は去年も出ていた」とおっしゃる方も少なくありません。「一時的に発生ただけでその後はいなくなったから大丈夫だと思った」と感じてしまう方もいるようです。しかし、群飛はあくまでも巣分かれです。ほんの一部が外へ出てきただけで、巣がそこからなくなったわけではありません。お住まいでハネアリを見かけたら決して放置せず、すぐに専門家にご相談ください。
しかし、建物を良い状態で保つためには、本来シロアリ被害に遭ってからではなく、遭わないための予防と定期的な点検をおこなうことが重要です。予防に勝る効果はない、そう思います。ご自分のお住まいを守るために定期的な住まいの点検とシロアリ予防の実施をおこなっていくことが良いでしょう。
そして、建築会社様におかれましては、皆様の大切なお施主様に悲しい思いをさせないためにも、定期的な住まいの点検の実施を促していただければと思います。

今年の4月5月もハネアリ群飛調査は実施する予定ですので、また調査結果が出ましたらこちらEVITAGEN(エビタージェン)にて報告させていただこうと思います。