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2025.02.27

水とシロアリ

今回は、シロアリと水の関係についてご紹介していきます。

1.生物と水

生物の生活になくてはならないもの、それは水です。

人間は体内の水分が2%失われると喉の渇きを感じ始め、運動能力の低下などの障害が発生し、3%で思考力の低下や食欲不振などの症状がおこり、4〜5%になると疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状があらわれ10%以上になると死の危険性が発生します。

食料がなくても1ヶ月ほどは生きることができますが水が飲めないと2〜3日で死亡してしまうほど重要な要素です。

これは他の生物にも共通する事柄です。

日本全国に分布するシロアリの中で現状ミゾガシラシロアリ科とレイビシロアリ科が存在していますが、別名地下シロアリと乾材シロアリに分けることができます。

今回は特にミゾガシラシロアリ科こと地下シロアリについて水との関係性をご紹介できればと思います。

 

2.シロアリはどこまで乾燥に耐えることができるのか?

よく言われているのは、イエシロアリは水を運ぶ能力がある為住宅の2階部分にまで被害が及び、ヤマトシロアリは水を運ぶ能力がない為被害は水廻りに集中して発生すると言われています。

では、イエシロアリはどこで水を運ぶのでしょうか?

現在の研究では、唾液腺の付近に存在する唾液嚢が貯水嚢として機能すると考えられています。

ただしヤマトシロアリにも同じ器官は存在しており、水の補充能力の有無については直接シロアリが口から飲むことで補充される予測や、体液(特に血リンパ)か。ら補充されるという予測がたてられているものの明確な結果は出ておらず今後の研究課題となっています。

ただし実験の結果として、気温25℃、相対湿度70%の環境で職蟻をシャーレに入れて水を与えない実験したところ、イエシロアリは4日後、ヤマトシロアリは2日後に全滅しました。

またイエシロアリでは2日間、ヤマトシロアリでは1日間絶水状態に置くとその後に水を与えても回復することができませんでした。

この際の体重の変化を計測してみるとイエシロアリでは初期段階で急激な減少をした後は緩やかに減少していく状態に対して、ヤマトシロアリでは直線的に減少していきました。

このことからイエシロアリ、ヤマトシロアリ双方の乾燥耐性に違いがあることがわかります。

 

3.シロアリにとって快適な環境は?

水、ジメジメした環境を好むと言われるシロアリ、ではどの程度の状態がシロアリにとって好ましい環境なのでしょうか?

水を与えつつ一定の相対湿度下で飼育したシロアリの摂食量を、摂食活動によって発生する振動や音などの情報、AE(アコースティック・エミッション)事象数で調べたものがあります。

いずれのシロアリにおいてもAE事象数からは相対湿度70%〜80%程度が最適環境であることがうかがえました。

特に相対湿度を変化させた場合の発生AE事象数の変化を見てみた場合だと、ヤマトシロアリにおいては摂食に最適な条件として80〜90%という値になり、相対湿度が下降していくと摂食活動の低下がおこっていきました。ただし、60%以下の数値になっても摂食活動自体が無くなることはなく、活性の低下にとどまっていました。

 

4.床下環境

以上の結果を踏まえて、もっとも重要なのは水分が発生する、貯まる状態を放置しないことが重要だということがわかります。

外回りの排水や庭先の土の状態を確認する、漏水などの異常を感じたら放置せずに点検や修繕を受けることが重要です。

また現状、弊社も含め業界全体でシロアリ防除工事と併せて調湿剤や床下換気扇などの床下の湿度状態の改善提案を行なっています。

実験の結果の通りですが、床下の湿度を乾燥状態までもっていくことは非常に難しく、湿度のコントロールのみで被害を止めることは難しいです。

ただし、木材の腐朽などの劣化事象に対する被害を低減する効果はある為、立地条件などの外部環境を考慮して併用するなどが効果的です。