シロアリとクロアリの関係や見分け方
シロアリとクロアリ、名前も似ていて同じ集団で生活する昆虫ですが、実は全く違う進化を遂げています。では一体何が違い、私たちが住む住宅や生活にはどんな影響があるのでしょうか?今回はシロアリとクロアリの違いや関係について解説していきます。
1.シロアリと比べたクロアリの特徴
クロアリという呼び方はシロアリと区別するための俗称で、本来は「アリ」が正しいです。
ここでは「クロアリ」と呼ぶことにします。
クロアリは、分類学上では「ハチ」に近い昆虫で「ハチ目」に属しています。
ハチのほうが原始的なグループで、産卵管の名残が毒針と言われています。
毒針を持つアリも存在し、ここ近年で問題となった「ヒアリ」も強力な毒針を持つことで知られています。
クロアリは主に他の昆虫などを食べる肉食ですが、種類によっては草食や雑食など様々な種類に分化しています。
種類によっては木材に穴をあけるようなクロアリもいますが、木材自体を栄養分にすることはありませんので、基本的には住宅自体に影響を与えるようなことはしません。
ただし、もともと腐った木などに巣をつくる種類もありますので雨漏れなどの状況によって住宅の中に大量に進入してくることもあります。
2.クロアリと比べたシロアリの特徴
クロアリはハチに近いグループでしたが、シロアリは「ゴキブリ」の仲間で「ゴキブリ目」に属しています。
クロアリも集団で生活をする「社会性昆虫」ですが、シロアリも同じく集団で生活をする社会性昆虫です。
シロアリは木材を栄養としている昆虫で、住宅の構造や下地材などを加害することがあります。
シロアリは約3000種ほど世界に分布するといわれていますがそのうち建物の木材を加害するのは100種類ほどといわれています。
家を食べる害虫というイメージが強いと思いますが、世界に存在しているほとんどは物質循環という大きな役割をはたしています。
シロアリは成虫になると一般的には「ハネアリ」とよばれる形態になり、巣から飛び立っていきます。
日本には住宅を主に加害する種として、ヤマトシロアリとイエシロアリがいます。
おおよそヤマトシロアリは4~5月ごろ、イエシロアリは6~7月ごろにハネアリが飛び立つ時期です。
クロアリも同じようにハネアリになって飛び立っていきますが、様々な種類が分布しているため種類によって飛び立つ時期が違います。
3.シロアリとクロアリの見分け方
シロアリとクロアリは違う進化を遂げた昆虫ですが、先述のようにどちらもハネアリになって飛び立つ時期があります。
同じ時期にハネアリが発生することがあり、混同してしまう場合があります。
とはいえ、ポイントがわかれば見分けることが可能です。
シロアリ | クロアリ | |
触角 | 数珠状 | 「く」の字状 |
腹部 | 腹部と胸部が同じ幅で、くびれることはない | 基部が著しくくびれている |
ハネの大きさ | 前後のともに同じ大きさ | 前翅のほうが大きく、後翅のほうが小さい |
ハネの外観 | 翅脈が細くて多い | 翅脈が太くて少ない |
見た目はどちらも黒っぽく小さな虫にハネがある虫ですが、触角や腹部のくびれ、ハネの形状などで見分けることができます。
4.シロアリとクロアリの関係
シロアリとクロアリが近い場所に生息していたらどうなるのでしょうか?
クロアリは先述のとおり、基本的には肉食ですのでシロアリを食べてしまいます。
シロアリも兵隊アリがいますので応戦しますが、クロアリの方が強いのでまともに戦うと負けてしまいます。
巣の内部まで入れなかったり、巣ごと移動したりとクロアリはシロアリを餌にすることはあっても巣ごと駆逐するほどではありません。
では、建物の中で同じ場所に生息することはあるのでしょうか?
共存することはないものの、生息場所が被ってしまうことが稀にあります。
それは雨漏りや水漏れがある場合です。
クロアリの種類によっては腐った木材などを好み営巣する種がいます。
濡れた木材に誘因されクロアリが、水漏れした土台などに侵入した場合そこにシロアリが生息していると生息場所が被ってしまうことがあります。
5.まとめ
クロアリとシロアリの関係、住宅への影響をまとめると
・クロアリは雨漏りや水漏れに誘因されるが木材自体への影響はない
・シロアリは木材をを加害する
・クロアリは肉食なのでシロアリを食べることがあるが駆逐するほどではない
・繁殖の時期はどちらもハネアリになるがポイントを押さえると見分けることは可能
このように同じような社会性昆虫ですが、生活環や分類も大きく異なります。