日本中に生息するヤマトシロアリ
日本におけるシロアリ住宅被害の代表とも言えるヤマトシロアリについてお話させて頂きます。
【種類・分類】
ヤマトシロアリはゴキブリ目:ミゾガシラシロアリ科に属し頭部に溝がある事でミゾガシラシロアリ科に分類されています。また、アリではなくゴキブリに近い生態となっています。ちなみにアリはハチ目に区別されています。ここでの大きな違いは完全変態と不完全変態に分けられアリは完全変態・シロアリは不完全変態の成長となります。成長段階の違いでアリは卵→幼虫→蛹→成虫 シロアリは卵→幼虫→成虫と蛹の段階が無いことで区別されています。ヤマトシロアリ属としての種類は1種類ではなく複数の種類が確認されています。人で言うと哺乳類→人類→(日本人・アメリカ人・フランス人)と言う感じです。種類としは、カンモンシロアリ・アマミシロアリ・ミヤタケシロアリ・オキナワシロアリヤエヤマシロアリ・キアシシロアリ等がいます。これらの多くは沖縄や九州など日本の南での生息が確認されています。私たちの身近にいるヤマトシロアリは住宅を加害するシロアリとして認識されていますが自然界の中では朽ちた木等を分解し土に戻す役割をはたしており、害虫ではなく益虫としての働きになります。
[生態]
ヤマトシロアリは卵→幼虫→成虫となりますが成虫段階で働きアリ・兵隊アリ・ニンフに分かれます。ニンフになったシロアリがその後ハネアリとなり王・女王となります。良くシロアリが最終成長するとハネアリとなり飛び立つ=居なくなると思っている方も多いですが、ハネアリになるのは全体の数の1割程度と言われています。巣が出来始める初期段階は集団の世話をするために働きアリが多く存在し集団の規模が大きくなってくると集団を守る為の兵隊アリが増えていきます。そして集団がある程度まで成長してくるとニンフが生まれ他の集団を作る為ハネアリとなって飛び立つことになります。各種の働きとしては働きアリは巣の構築や卵・幼虫・兵隊アリ・女王の世話を行っており働きアリが居なければj兵隊アリや女王は食べ物を食べる事が出来ず死んでしまいます。兵隊アリは外部からの敵に対し果敢に戦いますが、とても弱いので勝てる事は殆どありません。その為、巣の通り道の大きさに近い頭の大きさを持ち頭で通り道を塞ぎ敵の侵入を阻止する事で巣を守る役割を果たしています。ニンフは繁殖の為に準備を進めヤマトシロアリの場合4月から5月にハネアリとなり繁殖に飛び立ちます。女王は王室の中でひたすら卵を産み続けます。また、女王が何らかの要因で死んでしまうと副女王が女王となり巣を守る為に卵を産み始めます。成長した巣に外敵被害が発生し巣の修復や世話する働きアリが減ると共食いなどを行い兵隊アリの数を調整し働きアリの数を増やす事も行います。また、女王が死に福女王王も居ない場合は働きアリが擬態し女王になる事もあります。このようにヤマトシロアリは集団を常にコントロールしながら生き延びていく術を持って居るため数億年前から生存し日本全体に生息できるシロアリになっていると思います。
[活動]
ヤマトシロアリは地下シロアリと言われ地中を動き回り食べ物を探しています。シロアリは目が退化している為、無作為に地中を進みぶつかった物を齧ってみて食べれるものであれば食べるという行動となっています。そして、目の代わりに進化しているものが触覚です。シロアリは触覚からの電気信号を感知し活動をしていると言われています。地中を動き回り為物を見つけると仲間の所へ戻り餌の場所を教えるのですが、その際に使われるのがフェロモンです。道しるべフェロモンを体から出し餌の場所まで他のシロアリを誘導します。その際も触覚でフェロモンを感じ取り動くと言われており、人間のように臭いでフェロモンを感じる事はありません。またこのフェロモンは危険が及んだ時などにも出され周囲に伝えていると言われています。シロアリはぶつかった物を齧って確認する習性がある為、ぶつかった先が住宅であれば住宅に被害が及びます。ヤマトシロアリの集団は1万~3万頭と言われており、特定の固定巣はもたず加害した箇所をコロニー(巣)として生活しています。ヤマトシロアリは比較的寒さには強いが乾燥に弱いため、ある程度湿った地中や木材の中で活動します。また加害箇所を移動する際に外敵や乾燥から身を守る為の蟻道(食べた物や排泄物等で作ったトンネル)を作り、蟻道の中を移動し身の安全を確保します。
[餌]
シロアリは気を食べるイメージだと思いますが、実際には木に含まれているセルロースとヘミセルロースを摂取する為に木を食べています。その為、木材から作られている紙やセルロースが含まれている衣類・畳等も食害されます。シロアリには人間と違い胃がありません。その為食べたものは腸の中にいる微生物が分解を行い、その分解する際に出るエネルギーを栄養としています。この微生物は木材に含まれるセルロース・ヘミセルロースは分解できますがリグニン(木材の年輪の濃い筋状の部分)は分解できないためシロアリもその部分は残して加害します。過去の被害事例で珍しいものはタンスにしまっておいたお札がシロアリに食べられるという事もあります。
まとめ
私たちの一番身近にいるシロアリ種で一番住宅への被害が多いのがヤマトシロアリです。ヤマトシロアリの加害スピードはイエシロアリなどと比較すると緩やかではありますが、生態的にしっかりとした防除を行わないと加害箇所に残った働きアリから集団が再結成され加害が止まらないという事になります。それぞれの生態をしっかりと抑えた上での対策が重要と言えます。