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2024.10.28

世界のシロアリ事情

鉄道の枕木などの社会インフラをシロアリ被害から守る、という日本のシロアリ防除の一例でもある起源から、120年以上の歴史を経て今に至るものの、日本も当初は海外から学んだ技術と独自の研究の蓄積から成り立っています。

では、海外のシロアリへの意識と駆除、防除の状況はどうなのか? 今回は、世界のシロアリ事情についてお話できればと思います。

1.シロアリ防除に掛けられている年間費用

世界では、シロアリ防除に掛けられる年間費用も大きなものになっています。

もちろん国土の大きさの差もあると思われますが、ハワイで1億ドル以上、アメリカ本土で27億ドル以上、オーストラリアでも1億ドル以上とのこと。

シロアリの種類が多く認められているこれらの国が、大きな産業になっているとも言える現状です。

オーストラリアでは350種類以上のシロアリが確認されています。

ヨーロッパでも8億ドル(フランスだけでも6億ドル)、中国にいたっては、20億ドル、確認されているシロアリの種類も500種近くです。

タイ、マレーシア、シンガポールフィリピンなどの東南アジアの中でも、インドネシアは4億ドルもの費用になっているようです。

 

2.世界のシロアリ対策事情

主にどの種類のシロアリ対策が取られているのでしょうか?

ハワイでは地下シロアリのイエシロアリ、アメリカ本土ではイエシロアリの被害と、乾材シロアリ(アメリカカンザイシロアリ:日本でも被害が拡大している 等)が、8:2の割合で、乾材対策も求められていますが、イエシロアリ対策が多いようです。

シロアリ種類の多いオーストラリアでも、家屋以外でも農作物、木製品に被害が及び、イエシロアリ属によるものが最も多いと言われています。

シロアリ被害状況だけで見れば、日本は地下シロアリのヤマトシロアリ属がいますが、同じような状況のようです。

各国・地域ではどのような対策が取られているのでしょうか?

 

2-1.ハワイ

まずハワイでは、イエシロアリ対策として、土壌処理、ホウ酸などの木部処理などの化学的防除、オーストラリアで発明されたステンレスメッシュなどの物理的防除、ベイトシステムも行われています。

また、乾材シロアリ対策では、建物ごと覆い、熱や燻蒸処理を行っているようですが、こちらは駆除方法の規模が大きいため、時間と費用が掛かります。

ハワイ州では、新築する際の木材全てに、加圧注入材を使用することが義務づけられ、ベイトシステムも歴史的な建造物の保護にも利用されています。

また、菌類、線虫の利用した生物的防除も考えられており、期待したいところです。

 

2-2.アメリカ本土

アメリカ本土ではどうでしょうか? この20年近くで、シロアリ対策が大幅に上昇傾向にあり、イエシロアリには土壌処理と、アメリカカンザイシロアリには燻蒸処理が主流です。 ベイトシステムも盛んに行われているようです。

ただ、近年は多量の防蟻薬剤の散布は環境への影響を考え、受け入れにくくなっている現状もあり、物理的なバリア工法、ベイト法、徐々に薬剤成分が放出されるような物理的な商品が期待されており、こちらにも期待したいところです。

 

2-3.オーストラリア

オーストラリアでは、蟻害と築年数が密接に関係しており、蟻害の予防には土壌処理と木部処理が最も有効であるという調査も20年以上前にされ、木材害虫や腐朽菌に対しての調査報告に必要な事項をまとめた規格も出されています。

蟻害確認には、最近では含水率計、超音波探知機、熱分析カメラなどの機器も使用されています。

中でも超音波探知機ターマトラックは日本でも使用されており、石膏ボード、コンクリートなどの中のシロアリの動きを探知機でき、非破壊での検査が可能です。

ステンレスメッシュ1つにしても、径が細かく要求され、他にも製材の保存方法などの規格も定められており、国を挙げての蟻害調査、規格の整備がなされています。

アメリカ本土と同じく、環境配慮への工法、薬剤へシフトしているようです。

 

2-4.ヨーロッパ

ヨーロッパでは、防除業者も防除件数も多い中で、特にフランスが被害が最大で、1999年には、『シロアリ法』なるものが成立しています。

その内容は、

①建築所有者がシロアリ被害を届出

②県政府レベルで情報収集

③県政府がシロアリ被害区を公表

④被害区で新しい建築基準法の適用、売買での被害検査証明、シロアリ被害部処理の義務づけ

⑤市長は建築所有者に専門家によるシロアリ検査を命じることができる、発見された場合は防除処理の義務づけ

⑥シロアリ生息区では建築基準法が改正され、防蟻処理済み木材のみの使用が許される

などの規定があります。

日本と同じ、建築前の処理では、防蟻剤含有シート等の物理的工法、土壌処理のバリア工法が主流で、5年間のシロアリ再発防止保障で、日本と同じですが、クレーム対応は3%以下とのことです。

 

2-5.アジア

アジアにおいては、日本では家屋害虫のイメージが強いですが、農作物への被害もあり、中国では土留め材や堤防などにもタイワンシロアリ(キノコシロアリ属)が営巣し、決壊、洪水につながる被害も出ているようです。

対処法は、土壌処理、木部処理が一般的ではあるものの、環境配慮もあり、特にセントリコンシステムのベイト工法が各国でも上市されています。

 

3.まとめ

このように、日本のみならず、世界の状況を知ることで、新しい知識、工法、技術、ひいては国、地域レベルの啓蒙、発想が得られます。

一企業のみならず、業界、国を挙げての対策が、将来的につくられていくことを望みます。