クローンを産み続けるヤマトシロアリの女王
ヤマトシロアリは全国的に分布する家を加害するシロアリです。
そのヤマトシロアリの女王は実は自身のクローンを産み続けていることが研究によって分かっています。
なぜクローンなのか?王と交配した子との違いは何なのか?
本記事はそんなシロアリの女王とヤマトシロアリの交配の仕組みについて解説をした内容です。
是非最後までご覧ください。
ヤマトシロアリ女王の候補。
ヤマトシロアリはきめ細かな駆除をしなければ、例え女王を駆除したとしても残った職蟻が女王に分化するというのが定説となっていました。
ではその女王になる候補というのはどのシロアリでも可能なのでしょうか?
実はどの職蟻でも女王候補になるかというとそうではないという事がここ最近の研究であきらかになりました。
それはどういうことなのでしょうか?
次世代女王、遺伝的な問題はないのか?
そもそも、職蟻が女王になるということは王と女王の子なので遺伝的には親近交配となるため遺伝的にはリスクとなります。女王の卵を調べるという研究がされた時に、一部の卵に「卵門」が無いという事が明らかになりました。「卵門」とは、卵の表面にある精子を通す孔です。つまり「卵門」が無いという事は王の遺伝子の影響がない女王の単為生殖ということになります。
単為生殖と有性生殖
有性生殖はオスとメスの交配によって子を産むことに対し、単為生殖はオスの力を借りずにメスだけで子を産む行為といいます。
実は、昆虫の中にはシロアリ以外にも単為生殖をする事が知られています。
昆虫のメスが卵の表面にある 卵門(精子が入るための孔)を閉じることによって有性生殖から単為生殖に繁殖様式を切り替える仕組 みを発見しました。今回発見された単為生殖へのスイッチの仕組みは、メスがオスからの干渉を受ける ことなく単為生殖を行うことができることを意味しており、昆虫の単為生殖の新しい進化経路を示すも のです。 昆虫が有性生殖と単為生殖を切り替える仕組みを解明から引用 Toshihisa Yashiro and Kenji Matsuura1*
なぜヤマトシロアリ女王はクローンを産む?
ではなぜ、ヤマトシロアリは単為生殖をしているのでしょうか?
単為生殖つまりヤマトシロアリの女王候補は遺伝的に女王と同じです。
つまりクローンという事になります。
コロニーを創設した王と女王は寿命は同じではなく王の方がはるかに長いことがわかっています。
女王が何らかの形で死亡したとしても、候補の女王がスタンバイをしているため子を産み続ける事ができます。
単為生殖なので2次女王は王の遺伝子を持っていない為、遺伝的には近親交配ではないので遺伝的なリスクを避ける事が出来ています。
女王はクローンを生み続ける事が可能のなので、遺伝的には不死身ということになります。
クローン女王と本物の女王の違い
では、本物の女王とクローン女王はごちゃごちゃに混ざって訳が分からなくならないのでしょうか?
これも女王も唯一の女王として君臨できるような仕組みになっています。
女王はつねに、女王フェロモンを放出し、女王の候補が女王にならないように抑制をしているのです。
つまり女王が死ぬと女王フェロモンがなくなり、次の候補が新しい女王となり、また女王フェロモンを放出し唯一の女王となります。
まとめ ヤマトシロアリの女王はクローンを産む不死身の女王だった
まとめると、ヤマトシロアリの王は女王よりも寿命が長く、次の女王候補になる子は親近高配にならないよう単為生殖、つまり女王のクローンでした。
クローンを産み続ける女王は遺伝的には不死身の状態ともいえる昆虫の不思議な生態ですね。