今回はシロアリの侵入経路について実際の被害の実態調査などに基づき紹介していきます。
1.はじめに
シロアリは木材を食べる虫です。
多くは森林の倒木や枯れ木などを食べてくれる、自然界の分解者の役割を担っています。
自然界にとっての益虫であるシロアリ。
ただ、ひとたび住宅に侵入し木材を食べ始めた場合、人にとっては害虫になってしまいます。
シロアリの駆除工事を行なう弊社ですが、それよりも大切にしていることは食べられないように予防する事だと考え、今ある住まいをより永くより安全に過ごしていただけるよう取り組んでいます。
2.全国の新築事情
一般的な木造住宅に焦点を当ててみます。
上記は国土交通省公表の新設着工戸数の推移となります。
総着工戸数は減少傾向ではあるものの横ばいが続いており、むしろ木造住宅の比率が高まっていることが分かります。
それについては、今周囲を取り巻くSDGsの流れや安心や安全に対する意識の向上、自然派志向など様々な要因があるかと思います。
しかし、裏を返せば木が多く使われる住宅はシロアリのリスクとしては高くなる場合もあるので、定期的なメンテナンスが重要となります。
3.シロアリ被害実態調査
少し古い資料になりますが、調査対象住宅は東北から北九州までの5000件以上にのぼり、
構造としては在来軸組工法を中心として枠組壁工法、木造プレハブ工法などの戸建て住宅も対象に調査を行なっています。
建物を工法別に見た割合としては上記の通りとなり、
木造在来工法が大半を占め、結果として全国の木造戸建て住宅における工法別比率とほぼ同じと考えられます。
さらに加えて上記は建物の基礎構造別数値となり、各構造毎の建物数となっています。
近年の基礎構造の変遷を踏まえ、「ベタ基礎」が最も多くなっており、次に「布基礎に土壌」となっているが、「布基礎に土間コンクリート」をうったものと「布基礎に防湿シートを敷設したもの」など、「ベタ基礎」を含めコンクリートやシートなどで床下を形成しているものは全体の6割を占めているのが分かります。
また、築年数が15年未満のものは9割以上が「ベタ基礎」で構成されており、逆に築年数が20年を超える建物では圧倒的に「布基礎」が多くなっています。
これらの状況から実際の被害事例を参照していきます。
実態調査報告では基礎別の蟻害発生率が掲載されており、内訳は上記の通り、
床下空間がそもそもないスラブ基礎が最も被害が少なく、次点でベタ基礎、続いて布基礎+防湿シート、布基礎+土間コンクリートとなっている。
ここで上がっている区分とは、
A区分・・・防蟻処理保証切れで、再施工せず、一定期間経過した物件
B区分・・・防蟻処理保証期間内の物件
を示しています。
上記を見る限り確かに床下にコンクリートがある建物床下が土の建物に比べて被害が少ない。しかし0では無いという点が重要です。
4.シロアリの侵入経路
ではコンクリートで守られているはずのシロアリはいったいどこから進入してくるのでしょうか?
「木質住宅における基礎周囲の防蟻に関する研究」の論文を参考に見ていきましょう。
ベタ基礎の場合の侵入経路は大きく分けて3つ、基礎コンクリートの打設部分と配管貫通部、外部基礎伝いがあります。外部基礎伝いを除いたこれらに初期段階もしくは経年によって生じたシロアリの進入可能な隙間が要因となります。
これらの隙間は、外的要因すなわち地震や台風などの自然災害、コンクリートの収縮など様々な理由で発生します。
論文内での実験によれば、イエシロアリで1.3ミリ以上(閾値1.0〜1.3ミリ)、ヤマトシロアリで1.0ミリ(閾値0.6〜1.0ミリ)の隙間があれば進入可能との結果が出ています。
またこの実験において、ミニチュアハウスを使用しており、実建物よりもコンクリートの収縮影響が小さい状況においても入隅部においてはシロアリの進入可能な隙間が生じることが示唆されており、より注意が必要な部分であることが分かります。
さらに、基礎内の蟻道がフーチングの端や基礎立ち上がりの角に沿って構築され入隅部の蟻道と繋がっている、フーチング上の蟻道は基礎の内部の土中や地中深くの誘因餌木まで伸びているなど、基礎構造面に構築される蟻道そのものが構造的に安定すると同時に、通常の土中と比べて降雨、振動、圧密などの影響も小さくなる可能性があります。
それは配管類も同様で、かつ建物内にも直接通じていることから基礎貫通部に隙間があった場合には結果としてシロアリを屋内に誘導してしまうことになります。
5.まとめ
以上の事から、コンクリートで覆われた床下空間であってもシロアリの進入は発生します。
床下が土壌の場合と比べて、進入率としては低くなるものの、0になることはありません。
特にシロアリは見えないところから上がり、食害を始めるため定期的なプロの目線による点検や薬剤などによる防蟻が重要となってきます。