床下の泥
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2022.10.29

令和4年台風15号による浸水被害の床下状況レポート

床下の泥

 令和4年9月23日から24日にかけて、本州を通過した台風15号は静岡県や愛知県に記録的な大雨をもたらしました。これによる被害が激甚災害に指定される見込みである旨が内閣府より発表されました。(令和4年10月19日時点)10月18日内閣府広報

 被害の中心が弊社の事業エリアでもあったことから、弊社も災害対応に日夜奔走している状況が今も続いております。被害に遭われました皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 今回はその影響による床下被害状況を可能な範囲でお伝えします。

1.令和4年 台風15号 被害の概要

 現時点で発表されている被害状況としては、死者負傷者等の人的被害が8名、全壊・半壊から床下浸水まで含めて建物被害が6654棟と報告されています。(令和4年10月12日発表時点)電力や水道などのライフラインも停止する地域も発生し、場所によってはその復旧に2週間ほどかかりました。道路については、橋の崩落や土砂の流出などにより、今もなお通行止めとなっている箇所が複数あります。また鉄道においても、大井川鐵道では一部区間で運行停止となっております。こうして列挙すると改めて被害の甚大さを感じずにはいられません。

 

2.床下に浸水してしまったら

 被害に遭われた建物が6000棟以上と非常に多くの水害が発生したことで、水害発生からおよそ一か月が経過した現在でも、床下における浸水被害に遭われた方からたくさんのお問い合わせが入っています。まずは水が引き家の中の片付けが一段落ついて一定レベルの生活再建ができてから、ようやく床下に手をかけられる、という方々もいらっしゃるのだと思います。

床下浸水

 現在の住宅の多くは、ベタ基礎と呼ばれる建物底面すべてコンクリートで覆われた造りをしています。(ベタ基礎について詳しくはこちらをご覧ください。

そのため一度浸水してしまうと、まるでプールのように水が溜まってしまい、自然乾燥だけで水を引かせるのには数週間程度かかり非常に時間を要してしまいます。こうした状況には、床下の排水作業には排水ポンプを使用して水を抜いていくこともひとつですが、点検口を空けての作業は床下の不浄な環境を室内に入れてしまう恐れもありますので、慎重におこなう必要があります。比較的安全な水抜き方法としては、コンクリート基礎側面にある水抜き穴から抜くことです(側面にない場合もあります)。しかしこの水抜き穴の表面は、化粧モルタルで埋められており穴を空け直す必要がありますので、建築会社様などに依頼して空けてもらうことをお勧めします。それでも写真のように完全に排水することは難しく、うっすらと床下に水は残ってしまいます。そこからは手作業で排水するか、自然乾燥に任せるか、になります。

 この水害によって浸水した水は汚水や雑菌などが混ざっていて不衛生である可能性がありますので、作業される際は十分に気を付けておこなってください。具体的には、ゴム手袋やカッパなどを着用し浸入水には直接触れないようにし、作業後はしっかりとせっけんで手を洗うようにしてください。

3.床下の浸水被害の実態

 ここからは床下の浸水被害状況を写真を交えてお伝えして参ります。
床下浸水

 浸水後の床下調査は、水が溜まっている状態ではおこなうことができませんので、排水作業完了後や水が引いてからおこなうこととなります。それでも上記写真のように、場所によっては水たまりが残っていることもしばしばありますので、私たちもカッパを着て作業にあたります。

 浸水が床上まで到達してしまっていると、水の浮力によって一旦浮いた床下の断熱材が落下してしまっていることがあります。

断熱材落下

 このような断熱材は、水を吸ってしまっておりそのまま元に戻すことはできません。落下したものは撤去して新たに設置し直す必要が出てきます。写真のようにここまでの状況になってしまっていると、床下調査自体もままならなくなってしまうこともあります。

床下の泥

 床下に泥水が入って乾くと、乾いた泥が床下一面に残っています。逆に比較的泥の少ない水が浸水した場合には、意外にも浸水したと聞いていなければ、そうと思えないほど何の影響も見られないケースもあります。しかしながら、そういったケースでもコンクリート基礎の立ち上がりを見てみるとうっすらと水平に筋が見られることがあり、その高さまで水が来ていたということがわかります。

 

4.床下木部への影響は?

 木造住宅の場合、心配になるのが浸水の影響による木部へのカビや腐朽(腐れ)の発生だと思います。しかし、私たちが調査した経験からするとそれについては過度な心配はなさそうです。

 浸水被害に遭われたお宅の床下の多くで、それによるカビや腐朽の発生は見られていません。いったん水につかった木部でも、早期に水をはけることができれば構造的な影響は最低限に抑えることができるようです。ただし、長期間水につかってしまうと影響が出てくる可能性が高まってきますので、やはり浸水した際は可能な限り早めに水を抜いておくことが肝要です。

 とは言え、水害に遭った際にはそのように床下にまですぐに着手できるような状況ではなないこともあります。むしろ何から手を付けて良いのかわからなくなってしまうと思います。まずは焦らずに一つ一つできることから手を付けて、普通の生活を取り戻すことを最優先にしていってください。床下のことを気にするのは、それからでも十分だと思います。

 

5.浸水後の床下には何が必要なのか?

 床下に浸水してしてしまった場合には、まずは排水,そして流入物や水害によって落下した断熱材等の撤去が必要になってきます。(撤去には床を解体したうえでの作業が必要となる場合があります。)そのあとその他異常が発生していないか床下調査をおこなうことが良いでしょう。そして、雑菌等繁殖し衛生環境としても良いとは言えない状態になっている可能性がありますので床下の殺菌消毒、そしてシロアリ防除薬剤も流れてしまっていますのでシロアリ防除工事をやり直す必要があります。

 

6.まとめ

 地震や台風などの災害が発生すると、皆様の生活を守ることが私たち住宅に携わる仕事をする者の使命なのだと改めて感じます。こちらの住宅とはの記事にもある通り、安心安全に暮らせることが住宅に必要な最低条件です。しかしその安心安全は決して当たり前のものではないということを、自然の猛威を前にすると感じます。しかしながら私たちは、皆様の”当たり前”の暮らしを”当たり前”に守っていける、そんな存在でありたいと思います。