今回は、シロアリが好む木材について着目していきます。
1.はじめに
シロアリの主食は木材内にあるセルロース、ヘミセルロースという成分であり、それらを分解することで栄養としています。
その中でも食べられやすい木材と食べられにくい木材が存在している部分に着目して調べてみました。
一般的にはマツ系統(クロマツ、アカマツ、エゾマツなど)やヤナギをはじめ、近年多く使われているホワイトウッドなどのやわらかい木材が食害されやすく、ヒノキやヒバ、スギなどかたい木材が被害にあいにくいと言われています。
2.水分と摂食性
前提条件として生物と水分は切っても切れない関係性にあり、シロアリは熱帯・亜熱帯性の昆虫であることから環境によってさまざまな変化はあるものの種類によってある程度の水分の好みがわかっています。
ヤマトシロアリは最適相対湿度が70~80%、イエシロアリは最適相対湿度が75~85%、アメリカカンザイシロアリは最適湿度が70~80%、ダイコクシロアリが最適相対湿度が70%前後となっている。いずれのシロアリ種においても相対湿度70~80%の状態が摂食活動が活発になるという結果になりました。
この数値より相対湿度が増加した場合、90%を上限にヤマトシロアリのみ摂食活動を活性化していき、逆に相対湿度が低下していくにつれての摂食活動の低下も顕著であった。
このデータからヤマトシロアリは特に木材内部の含水率や周辺環境の水分率に依存していることが分かります。
またこの論文の中ではアメリカカンザイシロアリについて面白いデータが出ており、樹種嗜好性について考察したものがあり、その中で、強制摂食試験と選択摂食試験から総合的に判断した嗜好性の順位はスプルース>ベイツガ>ヒノキ>ゴム>アカマツ>ベイマツ>スギ>ベイスギ>カラマツ>ブナとなっており全体的に見て一般的なシロアリに食べられにくい木材、各種商用材のランキングとは大きく異なる結果となっています。
3.地下シロアリ
ではヤマトシロアリやイエシロアリについてはどうなのだろうか?ということで、
実際に心材耐朽性として小や極小に区分される木材がそのまま多くは対蟻性が低い木材として区分されるが、
その中でも特に特徴として出ているのは耐朽性が高い分野であり、日本材で耐蟻性大に区分されるのはヒバ、コウヤマキ、イヌマキ、スダジイ、ビャクシン、イスノキ、カヤであり、中に区分されるのはヒノキ、スギ、ツガ、カラマツ、クスノキ、イタヤカエデ、カツラ、ケヤキ、ブナトチノキ、イチイガシ、アカガシとなっています。
一般的に広くシロアリに強い木材として知られているヒノキが区分としては中になっており、建築材としての加工性や商用としての共通量などが関係していると考察できます。
現在長期優良住宅を建てるために必要な劣化対策等級において農林水産省の規定している「製材の日本農林規格」の中で心材の耐久性区分D1の樹種は、ヒノキ、ヒバ、スギ、カラマツ、ベイヒ、ベイスギ、ベイヒバ、ベイマツ、ダフリカカラマツ及びサイプレスパインとなっているが、しっかりと心材のという文言が入っています。
前述の通り耐久性と防蟻性は完全に一致しないという点も注意が必要です。
4.心材と辺材
心材と辺材の違いについてはコトバンクからの引用を載せておきます。
しん‐ざい【心材】
〘 名詞 〙 樹木の材で中心に近い死んだ部分。種々の色素がたまって黄色、赤褐色、黒色などに着色されていることが多い。材質は緻密で腐りにくく、家具や建築材としてすぐれる。辺材に対していう。赤身(あかみ)。
へん‐ざい【辺材】
〘 名詞 〙 樹木の幹の周辺部にあって、液汁に富み、生活細胞からなる部分。中心に近い心材に対する。液材。白太(しらた)。白木質(はくぼくしつ)。
簡潔にまとめると木の幹をイメージした際に中心部分となるのが心材、幹の外側となるのが辺材です。
強度としては加工する際に乾燥させる工程を挟むためそこまで大きな違いはありません。
ただ含水率は辺材の方が高くなる傾向があるため腐朽や虫の被害を受けやすいというのが一般的です。
5.まとめ
シロアリ被害において被害にあいにくい木材という形でネットにある情報は大きくずれが無いことがわかります。
ただ重要なのは耐朽性も耐蟻性も実験を行なって規定となっているのは心材に関してであり、樹種の違いによる変化はあれど辺材に関しては対象外であるのが基本事項となっています。
建築資材として加工する際に心材のみを使うということはできないため耐蟻性が高い木材を使っていても注意が必要であり基本的には何らかの処理が必要です。
この木材だから絶対ということはなく、漏水や雨漏れ、周辺の環境や木材加工時、建設中の状態など様々な要因が複雑に重なってシロアリ被害や腐朽トラブルは発生してきます。
木材種類による性質を理解したうえで最適な処置を行なっていきましょう。