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2025.06.02

シロアリ対策は万全か? 住宅構造の変化が招く新たなリスク

今回は、シロアリ対策において、住宅構造の変化が招く新たなリスクについて綴っていきます。

1.はじめに:シロアリの基礎知識

シロアリについては、一般的にも検索すれば出てくるのは、

ヤマトシロアリ
イエシロアリ
アメリカカンザイシロアリ

が知られています。
ヤマトシロアリ、イエシロアリは地下シロアリとも呼ばれ、地中から進入し、アメリカカンザイシロアリは、外来種でもあり、家具、または建材等に侵入していたり、ハネアリとなって飛来して家屋に侵入する、ということもあります。
こういったことが世間に認知されてきたのも近現代と言っても過言ではありません。

 

2.シロアリ研究と防除の歴史

明治時代に、鉄道の枕木などがシロアリによって食害され、その社会インフラを守るために研究、シロアリ防除を行う事が起源となりました。(それが弊社 アイジーコンサルティングの創業の原点です。)
その当時は『木材を食べる白い虫』、程度の世間の認識でしたが、なぜ近現代では対シロアリとして駆除、予防、また建築構造とその造り方、使われる材料にも工夫がされてきたのか、建築業界とは切っても切れない関係なのは間違いありません。

現在の家屋とシロアリについて見ていきたいと思います。

3.日本の家屋構造とシロアリの関係性

以前の日本の家屋は、高床であったり、水回りも屋外で建っているような、土間の家が多かったです。

木材も露出しており、ヤマトシロアリの侵入があり、被害にあったとしても、ピンポイントでの駆除が容易でした。

しかし、1960年代あたりから、コンクリートによる密閉構造が広まり、細かく区切られた基礎、コンクリート土間による水回りも一般化しました。

また、玄関の木材のほとんども密閉化が進みました。

また、玄関にはポーチが付けられ、よりシロアリも環境的に外部の土壌から身を隠すように侵入しやすい状況となりました。

他にも、タイルが貼られ、基礎の表面にもモルタルが塗られ、密閉空間が増しました。

そして、1980年代から、防湿コンクリートやベタ基礎による乾燥や間仕切り基礎の単純化が進んだことで、シロアリの侵入は軽減されましたが、侵入が無くなることはなく、先に述べたように、玄関付近、または床下の建築時の外部との繋がった箇所(シロアリが通過できる程度の隙間)という限定的なものになりました。

 

しかし、決して構造批判、建築物への批判というわけではないことが前提ですが、省エネや快適性向上を目的に、様々な制度も設けられ、従来の建物とは大きく違う構造で建てられるようになってきました。

太陽熱利用のための床下の密閉、床下空間を外気と遮断する密閉、断熱材の多様な種類、使い方、地熱利用などなどが上げられます。

そんな中、床下のコンクリート化、木材の樹種の選択、基礎パッキンの使用など、物理的な対策をしていれば、シロアリ対策も万全、というような風潮もあったりする時期もありました。

しかしながら、これまでの構造とは違い、複雑化することで、シロアリ被害も複雑になり、シロアリ対策の不確実性が急激に広がっています。

基礎断熱においては、万が一シロアリの侵入があった場合、シロアリの侵入経路を与えてしまい、床下温度などが高められ、冬場も活動が可能になっているといっても過言ではありません。

4.誤解されがちなシロアリに関する情報

以下のような「通説」もありますが、必ずしも正確とは限りません

  • 「乾燥していればシロアリ被害はない」

  • 「ヒバやヒノキを使えばシロアリ被害はない」

  • 「断熱材はシロアリの栄養にならない」

  • 「土台が注入材だからシロアリが侵入しない」

  • 「ヤマトシロアリは水を運ばない」

  • 「羽アリは光に集まらない」

これらの認識をうのみにせず、正しい情報を知ることが重要です。

実際、ヤマトシロアリは乾燥した木材にも被害を与えることがあり、雨漏りなどの要因があれば高所まで侵入します。

ヤマトシロアリも日常的に水を利用して、乾いた木材やその他のものも加害し、雨漏りなどの条件が揃えば高い場所まで被害が及びます。

ヒバやヒノキなどによる『抗蟻性があると言われている樹種』にシロアリの侵入を防ぐまでの効果は期待できないこと、これは注入材の表面を通過し、注入材ではない木部が食害にあうことも見てきています。

羽アリの発生後、シロアリがいなくなったことにはならないこと、こちらも群れの一部が成熟し、または危険な状態になった場合、一部が羽アリとして発生しているため、群れは継続して食害しています。


5.今こそ見直す、構造に応じたシロアリ対策

シロアリと建築構造は切っても切れない関係にあります。かつての木造住宅とは異なり、現代の住宅は高断熱・高気密・複雑化した基礎構造により、シロアリの侵入や活動の形も変化してきました。

上記のように、「乾燥していれば大丈夫」「特定の木材なら安心」といった思い込みに頼らず、構造・環境・材料に応じた正確な知識と対策が求められています。

情報があふれる時代だからこそ、「本当に正しい情報とは何か?」を見極め、家を守るための判断力(=住まいのリテラシー)を高めることが重要です。

大切な家と家族を守るために、「今の構造に合わせたシロアリ対策」を、今一度見直してみてはいかがでしょうか。